「みさを大豆」づくしの弁当が食べられると聞いて、山都町東竹原地区で開催されたフットパスツアーに参加した。「みさを大豆」とは、高森町の井上みさをさんが発見したとされる幻の地大豆である。みさをさんは、明治~大正時代を生きた農家の主婦だが、農作物の栽培に熱心な人だったらしい。ある日、自分の畑でそれまで見たことのない、色艶のよい小ぶりな実を着けた一本の大豆の苗があることに気づき、優秀な実であることを直感。実を収穫し、翌年種をまき、少しずつ作付けを増やしていった。この新種の大豆の味の良さが評判となり、県内外からみさを大豆の種を求めて訪ねてくる人が増えていき、各地にこの大豆が広 まっていったという。
形は小粒で扁平なのが特徴。栄養価の面でも優れており、ビタミンE、大豆サポニン、大豆イソフラボンなどがフクユタカの1・5倍前後含まれているという。味が濃く、栗のような甘みがあることでも定評がある。しかし、農業の近代化に伴い、小粒で扁平な形状が選別機に合わないという理由などから栽培する人が 激減。高森町の一部の農家で細々と受け継がれてきた。
その希少価値に着目し、山都町の東竹原地区で「みさを大豆」の栽培が始まったのが7年ほど前のこと。収穫祭、味噌作りなどのイベントを行いながら、普及活動を行なっている。今回のフットパスと「みさを大豆」を組み合わせるという企画もその一環だ。まだ生産量が少ない現状 において、「みさを大豆」が食べるられる希少な機会でもある。
フットパスは、林業家の方の話を聞きながら、ヒノキやスギの森で森林浴を楽しむという3km、約2時間のコース。久しぶりの山歩きによるほどよい疲労感は、お目当の弁当をよりご馳走にしてくれる。
みさを大豆は、しみじみとうまかった。大豆ごはん、コロッケ、煮物などでそのおいしさを堪能させてもらったが、最もその濃厚な旨みを感じたのが豆腐。この日のために特別に作られたものらしいが、量産を切に望みたいところだ。大豆はしょうゆや味噌、豆腐、納豆などの原料として欠かせない、日本食の基本食材である。うまい地大豆は、地域の宝であることを痛感させられた。
「奥阿百年弁当」と命名された「みさを大豆」づくしの弁当。イベント用に特別に用意されたもので、一般販売は行われていない。
11月に入ると収穫が始まる。粒は小さいが、たくさん実がつき、収量が多いのが特徴だ。
「みさを大豆」を生産するみなさん。現在18人ほどが栽培し、1トンほどを生産。「集まって選別するのも福祉の一環(笑)」
熊本の宝といわれるナンゴウヒを見学したり、メアサスギの100年の森で森林浴を楽しめる「奥阿蘇東竹原西コース」が人気。
熊本県阿蘇市一の宮町宮地4607-1
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